『わけあり物件』 4/5
[平日夕方に小説が届くニュースレター。月曜から金曜の全5話で完結する奇妙な物語です。土曜日には、一気読みできる記事を配信します。メールドレスを登録いただくと毎号メールで届くので、続きを見逃さずに読むことができます。今日もお疲れ様でした。一日の終わりに一話いかがですか?]
「え?なんだこれ……」
この小説の導入を読むだけで、この作品の不穏さに気付いた
「これって……」
〈編集者の村本は担当している作家の若林俊明に深夜2時のファミレスに呼び出された。入り口を入って右奥の窓側の席が若林の定位置。
「村本さん、いい物件見つけましたよ」
肩まで伸びたロン毛に無精髭の男には似つかわしくない、生クリームがこれでもかというくらい乗ったパフェを口に運びながら若林はそう言った。
「若林さん勘弁して下さいよ、前回もそんなこと言ってたじゃないですか」〉
「なんだよ……なんだよこれは!?」
〈 「全く……で今回はどんなわけあり物件なんですか?」
「村本さん、ちょっとこれ見てよ。」
若林が見せたのはスクラップブックでそこには古いものから新しいものまで丁寧に新聞を切り抜いた記事が貼られている。
「世田谷区連続不審死……ああこれニュースで見たことありますよ。なんでもこの古いアパートのある部屋に住んだ人が連続して亡くなって……その全員が心臓発作という……ってまさか」
「これさ気持ちい悪いニュースだよね? 細かい住所はニュースで公開されてなかったんだけどね……古い知り合いが独自のルートで調べてくれてさ」〉
そこに書かれていたのは、この物件のことを知らせるために村本が深夜にファミレスに呼び出されたときのことだった。そのときの会話や行動が描写されている。さらに驚いたのはその後の文章だ。
〈「では、また何かあったら連絡下さい」
「はい……」
村本は再びため息を吐きタクシーへと戻った。
「神保町方面へお願いします」
村本は窓から若林の後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。
生きている若林の姿を見たのはこれが最後だった。1ヶ月後のニュースで、ベストセラー作家の若林俊明の訃報が報じられた。〉
「何で……こんなことって……なんだよこれ? 自分が死ぬことまで書いてあるぞ、こんなのっておかしいだろ」
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