『誘い水』 5/5

 駅を出ると雨が降っていた。ようやくこの時が来た。今日は久しぶりの狩だ。駅前の横断歩道は会社帰りの人間が雨のせいもあり暗い顔で行き交うが俺は浮かれていた。その後ちか姐、いやアイドル志望の橋本千佳子とは何度か直接会い、何度も話をして丁寧に誘導した。
バラシ屋トシヤ 2023.05.12
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 駅を出ると雨が降っていた。ようやくこの時が来た。今日は久しぶりの狩だ。駅前の横断歩道は会社帰りの人間が雨のせいもあり暗い顔で行き交うが俺は浮かれていた。その後ちか姐、いやアイドル志望の橋本千佳子とは何度か直接会い、何度も話をして丁寧に誘導した。

「売れている人間はみんなしていること」

「自分の力があればキミを事務所のトップタレントにプッシュすることができる」

 常套句だがこれ以上に本気の人間、そして焦っている人間をを迷わせる言葉を俺は知らない。そして巧みに今日という日が訪れるように少しずつ誘い水を出した。相手はずば抜けて美人というわけではないが普通に生きてきたら俺のような人間がおよそ関わることはないレベルの女だ。

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